学校防災教育研究拠点

学校で取り組む災害に対する心理的備えに関する研究
研究目的:福島県いわき市において、被災した子どものカウンセリングと研究に取り組み、今もなお災害の影響が残る子どもや家庭を目の当たりにしてきた。このことから、災害の物理的被害だけでなく心理的被害を防ぐ心理的備えが必要であると考えた。また、防災教育の実施には、災害リスクの認知や、被災時の緊急対応訓練、防災準備品に関する知識の普及だけではなく、被災者の心理的影響やストレスについて知識や対処方法を取り入れる必要であることが指摘されている(元吉, 2012)。加えて、防災教育を実施する上で、学校の中で行われる介入は多数の生徒に同時に提供するため費用対効果が高い(Throuvala et al.,2019)。これまでの防災教育に心理的被害を緩和する視点を加え、それを学校教育の中で展開していくことが必要である。
そこで、災害に対する心理的備えの充実を目指し、心理学、防災工学、気象学、スポーツ科学など様々な分野の専門家と学校教育の実践家である教師とが協働で行う学校防災教育の新たな形態を構築する。そのために、①災害時の心の健康の変化、②災害弱者のレジリエンス、③防災意識の促進要因を明らかにする。そして、これらの研究知見に基づいた④心の防災教育を開発し、心の健康、レジリエンス、防災意識についての効果検証を行う。
意義:
・災害時の心の健康の変化を予測できるようになることで、タイムリーで効果的な心の健康への介入を実施可能にする。適切な早期の介入は、災害後数十年間持続する可能性のある心的外傷後ストレス障害(PTSD)やうつ病の予防につながる。
・レジリエンスの視点を取り入れることにより、単に災害弱者のニーズに一時的に対処することから災害弱者の長期的な回復と成長を促進することに焦点を移す。これにより心のケアとそのための防災教育を促進することができる。
・防災意識を促進させることで、個人やコミュニティがより適切に災害リスクを認識できるようになり、準備や対策を事前に行うことが期待される。